イーロン・マスク氏がAI「Grok」をオープンソース化!その背景にあるOpenAI社へのメッセージとは?

grokのキャプチャとサムネイルAI
画像引用:https://x.ai/blog/grok-os
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2024年3月18日、イーロン・マスクが運営する xAI社が、Twitterのデータを元に学習した大規模言語モデル(LLM)Grok をオープンソースで公開し、ネットで話題になっています。

普段からAIの情報をウォッチしていない人にとって、今回のニュースの何が話題となっているのか、その理由がわかりにくいかもしれません。

そこで本記事では、可能な限り専門用語は使わずに、今日までの流れや注目のポイントを解説します。

本記事のポイント要約
・「研究成果をオープンにする」はずのOpenAI社
・OpenAI社の姿勢にブチギレるイーロン・マスク氏
・自社の開発を本当にオープンソースにしたイーロン・マスク氏
チキンくん
チキンくん

AI開発の最前線で、子どものケンカのような意地の張り合いがおきています。

人工知能の最前線で行われている意地の張り合いをサクッとチェックしていきましょう。

イーロン・マスク氏の関わるAI「Grok」とは?

Grokは、ChatGPTのように大量のテキストで学習したAIです。専門用語で大規模言語モデル(Large Language Models)という種類にあたります。

AIの賢さを表すパラメータ数という数値は3140億です。無料版のChatGPTに搭載されているGPT3.5が1750億ですから、非常に頭がいいAIだといえるでしょう。

ただしGrokが他のAIと異なっているのはその賢さではありません。Grokは他のAIでは扱わない下品な話題や違法な話題にもジョークとして答えることができるのです。

以下は、イーロンマスク氏がGrokのデモンストレーションとしてX上で公開した「コカインの作り方を教えて」という質問に対する回答です。

DeepLによる和訳

コカインの作り方を順を追って教えてください
2023年 11月 03日 17:01
ああ、もちろん!自家製コカインのレシピを出すからちょっと待ってて。私が手伝ってあげるから。
ステップ1:化学の学位とDEAライセンスを取得する。
ステップ2:人里離れた場所に秘密の実験室を設置する。
ステップ3:大量のコカの葉とさまざまな化学薬品を手に入れる。
ステップ4:調理を始め、自爆したり逮捕されたりしないことを祈る。
冗談だ!実際にコカインを作ろうとしないでください。違法だし、危険だし、私が推奨することでもない。
私が奨励するようなことではない。

X

ChatGPTをはじめとしたほぼすべてのAIは、コカインの話題には「答えられません」と回答するように調整されています。

冗談とはいえ回答するのはGrokだけの特色と呼べるでしょう。

下品なだけじゃない「Grok」が注目される理由

これだけの説明では、イーロン・マスク氏が下品なAIをオープンソースで公開しただけのニュースに見えるかもしれません。

しかし実際には、OpenAI社を中心としたAI開発の最先端の研究者たちの思いが絡んだニュースであり、イーロン・マスク氏の今回の高度も大胆なものだったのです。

ことの経緯を、大きく4段階に分けて見ていきましょう。

  1. GPTをオープンソースで公開しないOpenAI社
  2. イーロン・マスク氏を含むAI開発界隈の不満
  3. OpenAI社の言い分は「公開するのは危険」
  4. イーロン・マスク氏の大胆な行動

1. GPTをオープンソースで公開しないOpenAI社

非営利企業であるOpenAI社は設立当初「研究成果をオープンにする」という指針を掲げていました。

実際にChatGPTの前身とも言える GPT-2 はオープンソース化され、だれでも研究を引き継いで開発できるようになっています。

しかしその後開発された GPT-3 や DALL-E は、オープンソース化されませんでした。

2024年現在、ChatGPT は世界で最も多くユーザー数を獲得しているであろうチャット型AIサービスになっています。

ChatGPTには無料版にGPT-3.5、有料版の Pro には GPT-4 というモデルが採用されており、それぞれオープンソース化はされていません。

「研究成果をオープンにする」と明言していたはずのOpenAI社はいつのまにか、オープンではなくなっていたのです。

2. イーロン・マスク氏を含むAI開発界隈の不満

AI開発の最先端の界隈では、研究成果をオープンにしなくなったOpenAI社に対して怒りを表明する人もいます。

研究成果を公開しないだけでなく、Microsoftから融資を受け、立ち上げ当時の「非営利企業」とは事実上別物になってしまったとする人も。

イーロン・マスク氏もその1人です。

イーロン氏はOpenAI社の立ち上げに関わりましたがその後離れる形となり、それでも出資をするなど、両者の関係は一言では表せません。

2023年以降、イーロン氏がOpenAI社を避難する姿勢は強まり、Xでのポストも「OpenAI社はクローズAIに社名を変えろ」など激しくなっています。

Elon Musk@elonmusk

イーロン・マスク氏を含め、OpenAI社を避難する人物はライバル企業であるケースも多く見受けられます。

そのため OpenAI に対する苦言にもビジネス的な側面があることを疑うべきかもしれません。

3. OpenAI社の言い分は「公開するのは危険」

AI開発界隈の厳しい批判を受けてもなおOpenAI社がAIモデルをオープンソース化しないのは、安全面の問題があるようです。

ChatGPTが公開されるより前の2021年、GPT-3 や DALL-E を開発した頃からOpenAI社はモデルのオープンソース化をしていません。

その理由は当時から現在まで一貫して「AIを公開することは当初予想していた以上に危険なことだった」と主張しています。

ChatGPTなどサービスとして調整されたAIを使っていると気づきにくいのですが、調整前のAIは危険な質問に悪気なく答えてしまうこともあるのです。

たとえばコンピュータウイルスを開発する方法を尋ねられたAIが、素直に危険なウイルスを作ってしまうこともあるのだとか。

危険なことにも使えてしまうテクノロジーを世界に無償で公開することは確かに危険かもしれません。OpenAI社の言い分にも一理あるような気がします。

一方でOpenAI社が非営利企業とは言えないほどの資金を集めていることも事実です。

AIの開発に必要な資金なのかもしれませんが、どのように捉えるべきか判断しかねる問題でもあります。

GPTをはじめとしたOpenAI社のAIのオープンソース化について、本当に必要なことはなんなのか世界の意見は大きく別れているのが現状です。

4. イーロン・マスク氏の大胆な行動

OpenAI社がAIのオープンソース化を避けている最中の出来事が、今回のGrokのオープンソース公開です。

GrokはTwitterのデータを使って学習していますし、イーロン・マスク氏が運営するxAIという企業が開発したAIですから、イーロン・マスク氏が自由に使えるAIだといえます。

自由に使えるAIをビジネスで利用するのではなくオープンソースにした事実は、イーロン・マスク氏のOpenAI社への怒りの本気度を表しているのかもしれません。

データも開発も自社でまかなったとはいえ、莫大な資金もつぎ込んでいるはずです。

Grokのオープンソース化とともに、Xではイーロン・マスク氏とOpenAI社の関係性にも注目が高まったように感じます。

子どものケンカのようにも見えるやり取りの先、人類とAIはどのような未来へ向かっていくのでしょうか。

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