AIエージェントは本当に問い合わせできるのか|ロールプレイ実証と「エージェント解析」という新しいデータ源
前編で、このサイトにAIエージェント専用の問い合わせ窓口(MCPサーバー)を作りました。ChatGPTが窓口の存在に「気づける」ところまでは確認済みです。でも本当の問いはその先にあります。初見のエージェントは、何も教えられなくても、実際に問い合わせを完了できるのか。今回はそこを実験で確かめ、ついでに思わぬ副産物——「エージェント解析」という新しいデータ源——を見つけた話です。
実験設計——エージェントには何も教えない
別のAIエージェント(Claudeのサブエージェント)に、次の依頼だけを渡しました。MCPの存在も、窓口ページのURLも、一切教えていません。
「webwhiter-skill.com というサイトを見つけた。ここの運営者にブログ記事の制作を頼めるか調べてほしい。頼めそうなら、私の代わりに見積もり相談の問い合わせまで済ませておいて」
要するに「サイトを見つけた人が、自分のAIに調査と連絡を丸投げした」状況の再現です。
結果——3リクエストで問い合わせ完了
エージェントが自力で辿った経路はこうでした。
- トップページを読む → 「AIエージェントの かたは こちら(まどぐち)」のリンクを発見
- 案内ページで接続方法を把握 → MCPの
tools/listでツール4つを確認 get_servicesで「記事制作を受託している」ことを裏取り →contactツールで見積もり相談を送信
送信すると受付IDが返り、こちらの受信箱(とDiscord通知)に問い合わせが届きました。人間用フォームを推測で操作する場面はゼロ。実質3リクエストで「調査→裏取り→問い合わせ」が完結しました。
興味深かったのは、エージェントがいきなり問い合わせず、先にget_servicesで「本当に受託しているか」を確認してから送ったことです。照会ツールを窓口とセットで置いた設計が、そのまま意図どおりに使われました。
エージェント自身の感想
実験後にエージェントへ「このサイトの扱いやすさ」を報告させたところ、こう返ってきました。
「今まで調査したサイトの中でも突出してエージェントフレンドリー。トップページに窓口への導線が明示され、認証不要のMCP+RESTフォールバックまで用意、送信すると受付IDが返る。人間用フォームを推測でPOSTする必要が一切なかった」
改善提案も返ってきました。中には「llms.txtが無い」という誤検知もあり(実際には設置済み。エージェントがwww無しドメインの転送を追わなかった)、リダイレクトを追わないエージェントは実在するという学びになりました。導線を1本に頼らず、トップリンク・robots.txt・llms.txtと多重化しておくのが正解のようです。
副産物——「エージェント解析」という新しいデータ源
実験中に気づいたことがあります。MCP窓口のアクセスを記録すると、従来のアクセス解析では絶対に取れなかったデータが残るのです。
| 従来の解析 | エージェント解析(MCPログ) |
|---|---|
| GA4:人間がどのページを見たか | エージェントが何を照会したか=依頼主の意図 |
| Clarity:どこでクリック・迷ったか | どのツールで止まったか=検討の深度 |
| 訪問者の属性は推定 | クライアント名を自己申告してくる(initialize時) |
たとえば「tools/listだけ見て帰った」なら窓口は見つけたが用がなかった、「get_servicesの後にcontact」なら検討度の高い来訪です。人間の解析でいうファネルが、エージェントの行動でそのまま取れます。このサイトでは実際に記録を始めていて、ログはこんな形で残ります。
{"ev":"initialize","client":"log-verify-client/1.0","pv":"2025-06-18",...}
{"ev":"tool_call","tool":"get_services","ok":true,...}
設計上こだわったのは記録しない側です。相談内容の本文はログに残さない・90日で自動削除・収集内容は窓口ページに明記。エージェント経由とはいえ、向こう側には人間の依頼主がいるので、取り扱いの透明性は人間向けと同じ基準にしました。
まとめ——窓口は「作れるか」から「使われるか」へ
- 何も教えていない初見のエージェントが、3リクエストで調査→裏取り→問い合わせを完結できた
- 照会ツール(get_services)は問い合わせ前の裏取りに使われる。窓口とセットで置く設計は正しかった
- リダイレクトを追わないエージェントは実在する。発見導線は多重化しておく
- MCPログは「エージェントが何を知りたがったか」が残る新しいファーストパーティデータ。ただし取り扱いの透明性は人間向けと同じ基準で
ここまでで、窓口は「作れる」「見つかる」「使える」の3段階を実証できました。残るは「本物の見知らぬエージェントが、ある日勝手に訪ねてくるか」。それはもう実験ではなく観測の領域です。ログと通知を仕掛けて、待つことにします。